人事ダイバーシティ戦略

同じような大学を出て、同じような就職をして、同じ性(男性)の日本人だけが同じ会社に居続けて会社の運営をしていれば、異質な人間を排除、あるい同質化しようとする意識は自然と強くなるものだ。これが日本企業のグローバル対応を難しくしている。多様性の確保と言うと条件反射のように女性活用(この言葉に関する問題は既に指摘した)という言葉が出てくるが、女性だって同じ会社に20年もいれば同じように頭は固まってくる。

 「女のオジサン」を増やすことがダイバーシティではない。日本企業のグローバルなグループ経営において最も重要な多様性の確保は、まず中途採用者に本来の実力を発揮してもらうことであり、組織の壁をぶち破るローテーションを活発化させることであり、海外各拠点にいる優秀な人材をリーダーとして選抜し、公平に育成することだ。これは決してきれいごとではない。はるかに生々しい、自社にとっての競争優位の源泉を確保するためのことである。


 米国の食品会社が、自国で売れた商品をそのまま日本市場に持ってきても、まず売れない。日本の風土や文化、嗜好や生活様式などを調べてそれに合わせた商品とすることで、初めて競争優位をもたらすことができる。そのためには、米国の社員ではなく、日本市場の現場で働く社員ひとりひとりの提案や活動が不可欠だ。 “個“の違いを尊重すること、即ち多様性を受容することは、直接的に競争優位の源泉を形作っている。海外では企業にサプライヤーの多様性要件を定めるなどの規制を課し、それに積極的に対応することがビジネス上の優位に直結するような例もある。

 人事で言えば、経営陣に1人も外国人を登用していなかったり、「現地の方針に任せる」と口では言いながら現地トップの“お目付役”に年端もいかぬ日本人社員を送り込んだりする例も後を絶たない。女性活用と称して、「女性だけのグループに企画してもらいました」というような小手先の対応は、その会社のダイバーシティ・マネジメントの進展を遅らせるだけである。

 人事においてダイバーシティを実現するために重要なのは、経営の意思決定に近いところに多様性を取り入れていくことだ。