新4E
。昨年は年初に「4つのE」(Ecology=環境、E-Commerce=電子商取引、Emerging=新興国、Elder=高齢者)を取り上げた(2010年1月27日付「4つの『E』に注目」)が、今年も昨年以上にこの「4つのE」に注目していきたい。「4つのE」にとって、昨年まではリーマンショック以降の土台作りの時期だったが、今年は干支である兎のようにピョンと跳ねる年、飛躍が期待できる年になろう。
1. 電子商取引:スマートフォン普及で活発化
電子商取引の分野で最も注目したいのは、商取引そのものよりも電子商取引をするための端末となる「高機能携帯電話(スマートフォン)」に関連する企業群である。
スマートフォンの世界出荷台数は2010年(推定)の294百万台に対して、2011年は前年比4割増の414百万台が見込まれる(図表-1参照)。
調査会社の米IDCによれば、2011年のパソコン出荷台数は385百万台の見込みであることから、スマートフォンがパソコンを上回って情報端末の主役に躍り出るということである。
世界的市場拡大を受けて、日本企業が得意とする小型液晶、半導体、電子部品などの分野で活躍の場が広がりそうだ。
<図表-1 世界の携帯電話出荷台数(百万台)>
出所:IDCデータ等より、いちよし経済研究所作成、推定・予想はいちよし経済研究所
なお、フィーチャーフォンとは、日本国内で主流のアプリケーション運用やカメラ機能のある携帯電話。
【スマートフォンの主な関連企業】
<部品関連>
システナ、グンゼ 、イビデン、MARUWA、シコー、アンリツ、アルプス電気、フォスター電機、SMK、村田製作所、日東電工、きもと、他
<サービス関連>
カカクコム、ディー・エヌ・エー、サイバーエージェント、ヤフー、楽天、エムティーアイ、他
2. 環境:EVでリチウムイオン電池が急成長
次世代自動車として注目を集めてきた電気自動車(EV)。日産自動車が昨年12月に日米で「日産リーフ」の販売を開始したことにより、EV時代がいよいよ幕を開けた。
EV関連で注目されるのは、心臓部に当たる「リチウムイオン電池」。今後はEVへの車載用途をけん引役に、市場拡大が見込まれる。
リチウムイオン電池の材料では、韓国も国策として材料内製化を図るなどして急速な追い上げをみせているが、日本勢はエコカーで先行している日本自動車メーカーとタイアップするとともに、これまで蓄積されたノウハウで差別化を図る方針だ。
<図表-2 主なリチウムイオン電池材料の市場シェア>
出所:各種資料などを参考にいちよし経済研究所推定・予想
3. 新興国:自動化、省力化投資が拡大
新興国、とりわけアジアの躍進の恩恵を享受できる企業群に対しては、2011年も注目が怠れない。世界経済において「新興国の高成長、先進国の低成長」の図式が鮮明化しているが、この傾向はこの先もまだまだ続くとみられるからだ。
その新興国では今、特に中国などで賃金の上昇が問題となっている。中国の賃金は2010年に入って上昇ペースが加速、タイやマレーシアの水準まで上昇している。
今後、日本メーカーが得意とする自動化・省力化による生産性向上へのニーズが拡大し、ビジネスチャンスが到来するとみられる。
<図表-3 自動化・省力化関連で強みを有する主な企業群>
出所:いちよし経済研究所
4. 高齢者:強まる健康志向、都市部で介護需要
高齢化が進む中、健康志向が中長期的なトレンドになるとみられる。健康維持のためスポーツを始める人が増加傾向にあり、手軽なスポーツや基礎的なトレーニングを提供する企業が人気となっている。
また、首都圏(1都3県)の高齢者人口は、2005年時と比較すると2015年には270万人(05年比44.5%)増が見込まれており、在宅中心の「地域包括ケアシステム」の確立や、高齢者専用賃貸住宅等、住まいを含めた多様なサービスの整備と連携が求められる。デイサービスや有料老人ホーム、在宅介護関連企業の中期的な成長が期待できよう。
【主な関連企業】
<健康志向関連>
あさひ、ゼビオ、東祥、他
<介護関連>
ツクイ、メッセージ、ワタミ、パラマウントベッド、ベネッセホールディングス、
ニチイ学館、他