本田宗一郎とスティーブ・ジョブズ

1999年に米Time誌のインタビューでの発言「大事なのは技術ではなく、それを使って何を生み出すことができるかだ。私がしたいのは性能の良いコンピュータをつくることではない。コンピュータを使って感動を巻き起こすことなのだ」が紹介されていました。また、米Apple社の共同創業者のスティーブ・ウォズニアックは「ジョブズにとって何よりも大切だったものは人間なんです。それがスティーブ・ジョブズにとって全てなんです」と語っています。

 一方、本田宗一郎は、(ホンダの研究開発を担う)本田技術研究所について、「技術の研究をする所ではない。人間の研究をする所だ」と語っています。研究所の技術者が第1にすべきことは、お客様の心を研究し、お客様に喜んでもらう将来価値を見つけること。それが分かったら、手段である技術を使って、その将来価値を実現すればよい。なので、本田技術研究所は「技術ではなく、人間の研究をする所」というわけです。

 製品の価値を追求する姿勢も共通しています。番組では、「(ジョブズの)最高のものを造りたいという情熱はすさまじかった。しかし時に、いき過ぎることもあった。満足しなければ技術者たちを容赦なく罵倒した」と紹介しています。本田宗一郎も、製品の価値に対して熟慮が足りないとしょっちゅう技術者を怒鳴りつけました。時には「おまえたちはこれが本当にお客様の価値だと思っているのか」と涙を流しながら殴ることもあったそうです。