日本

中国の高額所得者はどんな老後をイメージしているのか。広い敷地に緑の芝生という豪華別荘さながらの中国の高齢者施設は、富裕層にとって理想的な老後の居場所なのだろうか。筆者は上海で何人かにこの話題を振り向けたのだが、意外な答えに驚かされた。

ある中国人医師はこう語った。「私は日本で老後を迎えたい。もう家も買ってありますから」ある中国人弁護士もこう言う。「中国で老後を迎えるつもりなんてない。これから関西にマンションを買う予定です。一稼ぎして日本で暮らそうと思っています」ある中国人経営者もこんな見方だ。「中国で余生を過ごしたい人はいないでしょうね。日本は国土が狭いが、山があって川があって風光明媚だし、生活スタイルも中国人と似ているから、住むには不便はないと思う」「老後は日本」――。そんな回答がこのところ非常に目立つのだ。

いくら中国の民間企業や外資系企業が参入し、老後のパラダイスを中国に築こうとも、高額所得者の関心は薄い。むしろ「国を出たい」という願望を強めていることが垣間見える。中国の医療・介護サービスは「無愛想で気が利かない上、金銭で釣らなければ動かない」のが現状だ。食品の安全は、もはや求める方がナンセンスと言ってもよい。老人になるほど「何を食べさせられるか分からない」という不信感はつのる。それがイヤならこの国を出るしか方法はない。

そこで目を向けるのが日本だ。彼らは「日本は長寿大国で健康大国」だと認識している。空気もよければ水もいい、食べ物も美味しく、介護士も優しい。世界有数の手厚い高齢者サービスが発展し、高齢者たちが生き生きと老後を過ごしている・・・、そんなイメージを抱く中国人は少なくない。日本の先進的な高齢者サービスを享受したいというのは、中国高額所得者の偽らざる心情である。