低迷する卸売業

「問屋不要論」が叫ばれ、中小の卸売業者は言うに及ばず、大手総合商社も含めて総体的に中間流通業者は低迷しているのが現状。通商産業省中小企業庁が2000年2月に発行した「平成11年卸売業の現状と課題」(同友館)によれば、卸売業の年間販売額のGNP比は1982年の1.51%をピークに年々減少傾向にあり、1997年には0.94%まで落ち込んでいる。卸売業の商店数、従業員数、販売額ともバブル崩壊以降、減少傾向にある。この卸売業の存立基盤を危うくさせている要因として、同書は2つの変化を指摘している。
第1に、情報システムを整備した有力メーカーが卸売業の代理店化、特約店化を進めて川下への物流機能を強化し、それに卸売業が依存してきたこと。
第2に、拡大する小売業量販チェーンは、消費者ニーズに合わせて業種を超えた品揃えを行っていますが、卸売業の多くは未だ業種別卸であり、その動きに対応できていないということ。
こうした変化が、卸売業が本来持つべき固有の機能−「情報縮約機能」と「ロジスティクス機能」−の発揮を低下させていると分析している。情報縮約機能とは、仕入先と販売先の取引情報等を収集・蓄積し、これを分析・活用する機能のこと。また、ロジスティクス機能とは、仕入先から販売先への効率的な商品収集・ストック・配送機能を指す。

卸売業の業際化

 こうした卸売業の今後の基本的方向性として、同書は「川上及び川下に向けて事業展開をする垂直的展開」と「取扱商品を拡大し、ロジスティクス機能を発揮する水平的展開」の2つを示唆している。これを従来の業種・業態の枠を超えた「業際化」と言い表している。
 フルライン化−専門化の軸と、川上拡大−川下拡大の軸で4つのセルに分け、7つのタイプの業態を示している。

●チェーン対応ロジスティクス卸:ロジスティクス機能で量販チェーンに対応
●ボランタリー卸(SM、CVS等):情報縮約機能とロジスティクス機能で地域チェーンの本部機能を代行
●サービスマーチャンダイザー:百貨店や量販チェーンの特定売場の品揃え管理を担う
●ボランタリー卸(専門店等):専門店を組織化し、その本部機能を担う
●生産機能の取り込み:マーケティングでの優位性を生かして生産段階を取り込み統合化
●メーカーの販売代行卸:特定メーカーの特定製品を小売向けに販売代行
●多様なPBの展開:小売のチェーン化による強力な販路を生かし、メーカーに自社のPB(プライベート・ブランド)を作らせPBマーケティングを展開