明日を支配するもの

「昨日を捨てる事なくして明日をつくることはできない。しかも昨日を守ることは難しく手間がかかる。組織の中でも貴重な資源、特に優れた人材を縛りつけられる」(『明日を支配するもの』)ドラッガーは1980年代半ば少なくとも企業の世界では変化への抵抗という問題はなくなったという。内部に変化への抵抗があったのでは組織そのものが立ち枯れとなる。かくして変化できなければつぶれるしかないことはようやく納得された。しかし変化が不可避といってもそれだけでは死や税のように避けることができないというにすぎない。できるだけ伸ばすべきものであり、なければないに越したことはないというにとどまる。変化が不可避であるのならば自ら変化しなければならない。変化の先頭にたたなければならない。変化をコントロールできるのは自らがその変化の先頭に立ったときだけである。特に急激な変化の時代に生き残れるのは変化の担い手、すなわちチェンジ・リーダーとなる者だけである。当然チェンジ・リーダーたるための条件が廃棄である。成果が上がらなくなったものや貢献できなくなったものに投下している資源を引き揚げなければならない。チェンジ・リーダーたるためには、あらゆる製品、サービス、プロセス、市場、流通チャネル、顧客、最終用途を点検する必要がある。しかも常時点検し次々に廃棄していかなければならない。第一に製品、サービス、プロセス、市場、流通チャンネル、顧客、最終用途の寿命が「まだ数年はある」といわれるようになった状況では廃棄が正しい行動である。第二にサービス、プロセス、市場が「償却ずみ」を理由として維持される状況にいたったならば廃棄が正しい行動である。第三に製品、プロセス、市場がこれからの製品、サービス、プロセス、市場を「邪魔する」ようになったならば廃棄が正しい行動である。「イノベーションはもちろん新しいものはすべてよきせぬ困難にぶつかる。その時能力ある人材のリーダーシップを必要とする。すぐれた人材を昨日に縛りつけていたのでは彼らに活躍させることはできない」(『明日を支配するもの』)